幻界プロミネンス2枚目のアルバムは、過逆性を孕んだ秘封倶楽部視点のアレンジを収録。
いつもの激しいゲームミュージックによる5曲に加え、ゲストさんからの素晴らしいアレンジを2曲、計7曲入りです。

数日前から、メリーに隠していた事があった。
メリーに見えている（と思われる）境界が、蓮子の目にも見えているのである。
前兆は何も無かった。ある朝起きたらそうなっていた。
突然の事に驚いたが、特にこれといった不都合は無い。
むしろ、『メリーに見えている世界』を実際に見られているのだと、少し喜んでもいた。
というか隠す理由も無いのだが、ちょっと驚かせてやろうと目論んでいたのだった。
ただし、どうやって驚かすかは全くの未定のまま。

一方、メリーは余り元気が無かった。
何故か数日前からいつも以上に元気な蓮子を見る度、若い子は良いわねと思っていた。
当然メリーも十分に若いが、衰えたものが一つあったのだ。
それは、境界を見る能力。
いつも見えていた筈の境界が、ある日を境に見辛くなっていた。
全く見えないというわけでもないし、見えなくなったからといって不都合も無い。
ただ、少しアイデンティティが失くなったような、そんな気がしていた。

その日は少し曇っていた。雨が降る様子も無いが、少し暗い。
いつもの様に授業を終え帰路についている蓮子の目に、大きな境界が映った。
ぽっかりと口を開けたその境界の内側には、見たことのない景色が広がっている。
私がいきなりここに飛び込めば、きっとメリーは驚くだろう。
そう思った蓮子は、その境界に向かって走りだした。
だが、メリーの目に境界は映っていなかったのだ。

蓮子が突然走りだした事に驚きその方向を振り向いた時には、既に蓮子の姿は無かった。

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